ワイヤーハーネスを構成する端子・コネクタ・電線には、国際規格と国内規格があり様々な規格が存在します。当コラムでは、ワイヤーハーネスを設計・製造する上で、知っておきたい主な規格についてご説明致します。
ワイヤーハーネスを構成する部品の国内規格
ワイヤーハーネスを構成する端子・コネクタ・電線にはJIS規格を始めとした国内規格があります。
まずは、国内規格について説明いたします。
JIS規格
ワイヤーハーネスを構成する部品の規格に、JIS規格があります。
JIS規格とは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)のことであり、産業標準化法に基づき制定された鉱工業品等の国家規格です。端子には、JIS C 2805が該当し、端子を製造する際の試験方法や呼び名が定められています。
また、電線に関してはJIS規格により導体の太さが定められており、その指標がSQです。
SQはSquare millimeter(平方ミリメートル)に由来します。電線の太さの規格にAWGがありますが、SQはJIS規格、AWGはUL規格になります。
電気用品安全法
ワイヤハーネスの端子・コネクタ・電線は、電気用品安全法に適合するように製造する必要があります。電気用品安全法とは、電気用品取締法が改正された法律で、電気用品による危険及び障害の発生を防止するために策定された法律で、平成13年4月1日より施行されています。
電気用品は「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」に分類されます。
例えば、ワイヤーハーネスに使用される、00㎟以下のゴム絶縁電線や合成樹脂絶縁電線は、特定電気用品に分類されますが、蛍光灯電線やネオン電線は特定以外の電気用品に分類されます。
JCS規格
JCS規格とは、日本電線工業会規格のことで一般社団法人日本電線工業会により定められた電線に関する規格です。製品規格や材料規格、試験・検査方法などが示されています。
ワイヤーハーネスを構成する部品の国際規格
次に、ワイヤーハーネスを構成する端子・コネクタ・電線の国際規格をご説明致します。
CSA規格
ワイヤーハーネスを構成する部品の規格には、国際規格として定められている規格が多くあり、その1つがカナダのCSA規格です。CSA規格とは、カナダ規格協会が策定して認証規格であり、カナダにおける電子機器を始めとした電気用品の安全規格です。カナダ向け電機製品の輸出には、CSAの認証取得が必要となりますので、ワイヤーハーネスを構成する端子・コネクタ・電線には、全てCSA認証を受けた製品を使用する必要があります。
また、一般的な安全規格として広まっており、カナダ向けでなくても、CSAに準拠し製造されることが多くあります。似ている規格にUL規格がありますが、UL規格はアメリカ保険業者安全試験所が策定する安全規格です。
UL規格
UL規格とは、アメリカ保険業者安全試験所が策定する安全規格です。
日本からアメリカにワイヤーハーネスを出荷する際は、ほとんどの場合、UL規格の認証を受けた製品にて構成する必要があります。UL規格は安全規格ですが、電線においては導体の太さを表すAWGが定められています。
前述の通り、JIS規格で定められているのがSQ、UL規格で定められているのがAWGです。SQは数値が大きくなると電線の断面積が太くなり、AWGは数値小さいほど断面積が太くなります。
AWG、SQは以下の通り対応します。
AWG | 断面積(mm2) | sq(JIS)対応サイズ |
---|---|---|
AWG 30 | 0.0507 | 0.05 sq |
AWG 28 | 0.0804 | 0.08 sq |
AWG 26 | 0.128 | 0.12 sq |
AWG 24 | 0.205 | 0.2 sq |
AWG 22 | 0.324 | 0.3 sq |
AWG 20 | 0.519 | 0.5 sq |
AWG 18 | 0.823 | 0.75 sq |
AWG 16 | 1.31 | 1.25 sq |
AWG 14 | 2.08 | 2 sq |
AWG 12 | 3.31 | 3.5 sq |
AWG 10 | 5.26 | 5.5 sq |
AWG 8 | 8.37 | 8 sq |
AWG 6 | 13.3 | 14 sq |
AWG 4 | 21.15 | 22 sq |
AWG 2 | 33.63 | 38 sq |
AWG 1 | 42.41 | 38 sq |
AWG 1/0 | 53.49 | 60 sq |
AWG 2/0 | 67.49 | 60 sq |
AWG 3/0 | 85.3 | 80 sq |
AWG 4/0 | 107.2 | 100 sq |
IEC規格
IEC規格とは、国際電気標準会議(Internatinal Electrotechnical Commission)が定めた電気・電子技術分野の国際規格です。電気に関する規格を国際的に統一するために定められています。ワイヤーハーネスでは、主にコネクタや電線(アルミ導体の裸線)が該当してきます。
EN規格
EN規格とは、EUにおける統一規格です。
EU加盟国間で貿易を円滑に行い、産業水準を統一することを目的に差貯められた規格です。EU加盟国では、EN規格に反する規格が存在しないように調整することが義務付けられています。
ワイヤーハーネスが使用される電子・電気機器においては、EN60204-1が定められています。これは「機器の安全・機械設備の電気機器」の規格となり、EUへの機械輸出においては上記要求を満たす必要があります。
ISO規格
ISO規格とは、国際標準化機構(International Organaization for Standardization)が定めた標準規格です。国際多岐な取引を円滑に行うために、製品やサービスに対して定められた国際的な基準となります。ワイヤーハーネスでは、コネクタや電線を始めとした電子・電気機器の多くで標準化されています。
GB規格
GB規格とは、中国国家標準規格のことです。
また、GBに適合していることを評価する制度にCCCがあります。CCC(China Compulsory Certification)は、中国が安全確保と環境保全を目的として定めたもので、中国強制承認と言われます。
CCCの対象製品は20製品ですが、その中に「電線ケーブル類」や「電気回路スイッチおよび保護又は接続陽の電気機器装置」とあり、ワイヤーハーネスも対象となる場合がありますので、中国に輸出する場合はGB規格で認証された製品を使用する必要があります。
ワイヤーハーネスを構成する部品のその他の規格
ワイヤーハーネスを設計・製造する上で、主に知っておきたい規格を上記にて説明させて頂きましたが、このほかにも、
- MIL規格:アメリカ軍の資材調達に関する規格
- IEEE規格:工業分野の標準化を行うIEEE-SAが定めた規格
- NEMA規格:アメリカ電機工業会により標準化された規格
などがあります。
ワイヤーハーネスの設計を行う上で、要求仕様として「○○の規格に準拠すること」等が記載されている場合は、使用する部品や仕様に注意が必要です。
ワイヤーハーネスも対象となるRoHs指令
ここまで、ワイヤーハーネスを構成する端子・コネクタ・電線が該当する規格を説明しましたが、規格以外にもRoHs指令に注意する必要があります。
RoHs指令とは、電気・電子機器における特定有害物資の使用制限に関する法律です。RoHs指令は2006年に施行され、2011年二は改正指令(RoHs2)が施行されています。
RoHs2では、AC1000V/CD1500V以下の定格電圧を持つ、全ての電気・電子機器が対象となります。RoHsは、2019年に一部改正され、制限物質が4物質増え、下記の合計10物質になりました。
- 鉛
- 水銀
- カドミウム
- 六価クロム
- ポリ臭化ビフェニル類
- ポリ臭化字フェニルエーテル類
- フタル酸ビス
- フタル酸ブチルベンジル
- フタル酸ジブチル
- フタル酸ジイソブチル
規制対象濃度は、カドミウムのみ0.01wt%(100ppm)で他物質は0.1wt%(1000ppm)となります。EUへの輸出品については、RoHs指令に適合する端子・コネクタ・電線を用いてワイヤーハーネスを製造する必要があります。
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