技術コラム

コネクタについて

コネクタに使用される樹脂素材を選定するポイント

近年、コネクタなどの電子部品の成形材料として、スーパーエンプラ(エンジニアリングプラスチック)の技術開発が発達しています。

コネクタやICソケットなどの電子部品に使用される工業用熱可塑性エンプラ素材は、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA6やPA66(ナイロン)など様々な種類がありその素材ごとに特徴や特性も変わってきます。

今回はそのようなエンプラ素材を選定する際のポイントと各樹脂素材の特徴をご紹介致します。

エンプラ・スーパーエンプラとは?

エンプラとは

エンプラとは、エンジニアリングプラスチックを指し従来の汎用プラスチックの弱点であった強度や耐熱性などの問題を克服した高機能な合成樹脂の総称です。エンプラの明確な定義はありませんが、一般的には100℃以上の耐熱性を持った合成樹脂を表すとされています。

エンプラは、耐久温度や強度の点で、金属部品と汎用プラスチック部品の中間の位置にあり、金属部品と比較して軽量であることや低コストであることが強みとして上げられます。また、汎用のプラスチックと比較し耐熱性が高く、強度も強いという特徴をもつため、多くの種類が開発され、用途に応じて使い分けられています。

スーパーエンプラとは

スーパーエンプラとは先述の高機能な合成樹脂であるエンプラに更なる耐熱特性や強度を付加した合成樹脂の素材です。

エンプラ同様、スーパーエンプラの明確な定義はありませんが、概ね150℃以上の耐熱性を持つプラスチックとされています。また、難燃性については、米国の製品安全認証企業・UL LLCが認証するUL規格によって評価され、それぞれのプラスチックの用途や利用目的により、その基準が定められています。

コネクタに使用される樹脂素材を選定するポイント

樹脂素材には多くの種類があり選定に迷うことが多々あるかと思います。
コネクタに使用される樹脂素材を選定するときには、下記のようなポイントをもとに選定する必要があります。

連続使用温度・荷重たわみ温度・曲げ強度・引張強度・成形吸縮率・線膨張係数・線膨張係数・難燃性・絶縁破壊電圧・耐薬品性・吸水率

上記のポイントについて、ご存じでない方のために以下に各ポイントについてまとめましたのでこちらをご参考下さい!

連続使用温度

連続使用温度とはUL規格のUL746Bに規定される、物質の長期的物性評価(耐熱性)の規格。40,000時間一定の温度の大気中に放置した場合、その物性値が初期値の50%劣化した温度を「連続使用温度」といいます。

荷重たわみ温度

荷重たわみ温度とは、樹脂・プラスチックに荷重をかけた状態で温度を上げていき、たわみが一定以上になる温度のことです。熱変形温度とも言い、耐熱性指標・材料の高温時剛性(弾性率)の指標です。これにより、樹脂・プラスチックの耐熱性を比較することが出来ます。

曲げ強度

曲げ強度とは、曲げ試験において試験片が破壊に至るまでの最大荷重を基に算出した曲げ応力の値を指します。

引張強度

引張強度とは、サンプルが破壊されるまで張力をかけ、その張力に対するサンプルの反応や数値を測定し求められる、機械的強度の値を指します。

成形吸縮率

成形収縮とは、金型に注入した樹脂が冷却されたあとに体積が縮むことです。樹脂は溶融した状態から固化した際に体積が減少します。体積が減少して縮んだ比率のことを「収縮率」といいます。

線膨張係数

温度上昇によって物体の長さや体積が膨張する割合を温度あたりで示したもので、熱膨張係数とも呼ばれています。JIS規格では単位は毎ケルビン(/K)と定められていますが、毎℃(/℃)などもよく使われます。長さの変化を表したものを線膨張係数(線膨張率)、体積の変化を表したものを体積膨張率と呼び、一般的には線膨張係数で示すことが多いです。

難燃性

難燃性とは、燃焼に対して抵抗する“燃えにくい”性質のことで、耐燃性といわれることもあります。 難燃性は、燃焼する速さは遅いものの、ある程度の時間は燃え続ける性質のことでもあります。難燃性については、UL規格の難燃グレードというものがあり、プラスチック材料の難燃度合について基準が定められています。コネクタの樹脂素材として一般的に使われているグレードはUL94規格のV0,V2です。難燃性については、V0,V2の基準を満たしているものを選定するのがよいと考えられます。

絶縁破壊電圧

絶縁破壊とは、絶縁体にかかる電圧がある限度以上になった時に、絶縁体が電気的に破壊し絶縁性を失って電流を流すようになる現象のことをいいます。 この時の電圧を絶縁破壊電圧といい、絶縁破壊電圧を材料厚みで割った値を絶縁破壊の強さといいます。

耐薬品性

耐薬品性とは、各薬品に対しての耐久性のことを言い、数字が大きい程耐薬品性に優れます。 薬品の種類にはアルカリ・酸類・酸化剤・有機溶剤・塩類などがあり、それらに対して溶けたり、膨張したり、反応しないことを耐薬品性があると言います。

吸水率

吸水率とは、一定の温度下で、一定時間蒸留水に浸した際、その重量の増加分と元の重量との比率を指し。 吸水性とはプラスチックが水を吸収する性質のことを言います。

コネクタに使われる樹脂の特徴

コネクタ製品に使用される樹脂素材は数多くありますが、一般的に使用されているものは、PBT・PPS・ナイロン・LCPの4種類です。

PBTの特徴について

PBTはポリブチレンテレフタレートという名称で、電気特性、耐薬品性などの様々な優れた特性と加工性を兼ね備えている樹脂素材です。ガラスが入っているPBTは耐熱性や強度が高いのですが、ガラスがない場合耐熱性が若干低くなってしまいます。

次にPPSですが、名称はポリフェニレンサルファイドといいます。耐熱性、難燃性、機械特性、寸法安定性、耐薬品性という優れたの特徴を活かし、性能バランスの良い材料として、電子部品業界や自動車部品業界など各分野で需要が伸びています。

ナイロンについて

ナイロンの中でもコネクタに使用されるナイロンは6ナイロン・66ナイロン・46ナイロン・変形6Tナイロンと4種類ありますナイロン全般の特徴としては、粘度が高いことや価格が比較的安いことがあげられます。ただ、その他の樹脂素材と比較すると耐熱性や強度について劣るものもあります。

LCPの特徴について

最後にLCPの特徴についてご説明いたします。
LCPとは、液晶ポリマーといわれる樹脂素材で、特性としては、耐熱性・剛性・弾性・成形流動性・耐薬品性・寸法安定性などコネクタ製品に必要とされる特性においてどれも高水準の性質をもつ樹脂素材です。ただ、価格が他の樹脂素材と比較し高いことが唯一のデメリットです。

このように、樹脂素材にはそれぞれ長所や短所があるため素材選定には、コネクタの製作に必要な特性を考慮し選定するのが良いでしょう。

ワイヤーハーネスの加工のことならワイヤーハーネス加工.comにお任せ!

今回はコネクターメーカーが樹脂素材を選定するときのポイントについてご説明いたしました。コネクタを製作する際にがどのような樹脂素材が使われているのかがお分かりいただけたかと思います。

ワイヤーハーネス加工センター.comは、各種樹脂素材で製作されているコネクタに多くの実績を保有しておりますので、自社のコネクタに対応しているハーネスをお探しの方はお気軽にお問い合わせ下さい!

まずはお気軽に
ご相談ください

ワイヤーハーネス加工センター.comを運営する千代田電子工業株式会社は、1,350台のアプリーケータを保有する国内有数のワイヤーハーネス加工メーカーです。
充実した設備と、1969年の創業以来培ってきたノウハウ・知見を持って高品質なワイヤーハーネスの試作、量産に対応させていただきます。